限りある土地の中で、隣の家との距離を50㎝空けると、家が狭くなりもったいないのでは?っと思いますが、その分良い事や、メリットもあります。
狭小住宅は玄関と駐車スペースが共有していることが多いですが、気になるのは間口。
毎日出入りする玄関口はある程度の幅がないと、出入りに苦労することも・・・。
狭小住宅は一般的な住宅と比べると間取りにゆとりがないので、一切の無駄も許されません。
今回は自転車も通れない程、玄関口が狭くなってしまったけど、50㎝距離を取ったお家です。
家づくりの取り組み
3階建て狭小住宅の間口事情
3階建て狭小住宅は、1坪単位の土地価格が高い都会などでよくみられる構造です。
狭い土地+間口も狭い土地だったので、一般的な土地価格より安く手に入れられました。
我が家は玄関と駐車場を併設しています。
車の横を通らないと玄関にたどり着けないので、間口の大きさはかなり重要になってきます。
自転車が玄関を通り抜けられない
間口が3.6mだからと言って私有地のギリギリまで家を建てられるわけではありません。
実際には建蔽率の問題や、壁や筋交いなど、どうしも削れない部分が家にはあるので、家の内部は更に狭くなりました。
我が家は3階建て、15坪の狭小住宅です。
間口が3.6mで、隣の家との敷地を合わせて、距離を左右50㎝とっています。
これは狭小住宅ならではの構造なのですが、耐震性を補う筋交いが入っているため、右の壁が一部分だけ出っ張った形になっています。
そのため、壁や筋交いなどを除いた車を止めるスペースと、人が通るスペースの幅は2.4m程になってしまいました。
玄関が駐車スペースと共有している場合の必要なスペース
- 軽自動車の幅1480㎜
- 普通自動車の幅1680㎜~1880㎜
- ワンボックスの幅1695㎜~1700㎜
車を止めるには、買う車によって必要な幅が決まってきます。
2400㎜-1880㎜=520㎜
我が家は、車の横を通るスペースは520㎜。
車の扉の開閉にも苦労しますが、問題は「自転車」です。
これにより自転車が玄関内に入ることができなくなってしまいました。
一般的な自転車のハンドルの幅は60㎝。
無理なく自転車が通ることを考えると70㎝。
更に、車を壁ギリギリまで止めることは難しい(サイドミラーなどの関係)ので、80cmは必要だと思います。
もう50㎝あれば世界は変わって見えただろうに。
空けなくても良かったのでは?
隣の家との距離が50㎝以上ある事のメリットとは
- ご近所トラブルの事前予防
- 家のメンテナンスがしやすい(足場が組める)
- 家のためになる
- 室外機や給湯器置き場の確保
- 換気扇などの排気口からの空気を避けることができる
ご近所トラブルの事前予防
隣の家との距離が近い場合、ご近所とのトラブルを事前に予防することができます。
敷地の境界線を越えてはみ出しているもの(植物など)があると隣の家から苦情が入るかもしれません。
生活音などの騒音問題や、窓の位置がかぶったりするとプライバシーの問題もあります。
もちろん、家を建てる時、設計士さんが計算してくれますが、長く住む家なので、ご近所づきあいは大切にしなければなりません。
家のメンテナンスがしやすい(足場が組める)
家は、10年置きにメンテナンスが必要と言われています。
特に外壁を交換する時や、外壁と外壁の間を埋めているシーリングの劣化はするのでメンテナンスが必要です。
外壁のメンテナンスをするには足場を組む必要があります。
職人の作業スペースの確保のために必要な幅は50㎝あれば作業可能だと言われているので、家のメンテナンスの事を考えると50㎝は必要です。
最近は、20年交換不要な外壁や、シーリングレスの外壁などもあります。
しかし、初期費用がかかることや、やはりどんなに保証されていようとも特にコーキングの劣化などを心配すると、足場は組めた方が良いです。
足場を組めないと外壁をいざ交換することになった場合、家の中から外壁を交換するという「内張り工法」などでリフォームをしなければなりません。
内部の壁を壊して外壁を交換するため、家具の移動や、工事が終わらなければ寝泊まりの場所の確保をするなど大掛かりな工事が必要になってきます。
外壁のメンテナンスを怠ると家の寿命を縮める原因にもなるので、メンテナンスは重要です。
家のためになる
隣の家との距離が近いと、日光や風が入ってきにくいです。
日当たりや風通しが悪いと湿気がこもりカビの発生や、家の老朽化が早まります。
50㎝距離があると日当たりや風通しが良くなることから家の寿命を延ばす事にもなります。
室外機や給湯器置き場の確保
エアコンや給湯器などの室外機は家の外に置かなければなりません。
家の距離が近いとこういった室外機置場にも悩まされることになります。
置けない場合は、エアコンだったら配管パイプを延長したりといった手間や費用も掛かります。
隣の家が敷地を貸してくれれば良いのですが、トラブルや気を使う事になってしまうかもしれません。
換気扇などの排気口からの空気を避けることができる
換気扇などから出る、排気口からタバコのニオイや、料理の煙に距離をとる事ができます。
50㎝程度では距離は不十分ですが、排気口から出る煙は汚いものなので、隣の家の煙で外壁も汚れる可能性があります。
また、隣の家の人が換気扇の下でタバコを吸うと、自分の家にタバコの煙が入ってくることも懸念されるので、距離をある程度、距離は有った方が良いです。
民法や建築基準法でトラブルが起きない
敷地と敷地の境界線の事を隣地境界線と言いますが、民法と建築基準法で隣と隣の家との距離の考え方が違っています。
民法 | 民法の隣地境界線の考え方 |
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民法234条1項 | 建物を築造するには 境界線から50㎝以上の距離を保たなければならない |
民法234条2項 | 違反して建築しようとしている場合 隣地の所有者は,建築の中止or変更を請求できる |
民法236条 | 異なる慣習があるときは,その慣習に従う (周りが50㎝空けていない場合はOK) |
建築基準法 | 建築基準法の隣地境界線の考え方 |
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建築基準法65条 | 防火地域又は準防火地域内にある建築物で,外壁が耐火構造のものについては,その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。 |
建築基準法では外壁が耐火構造であればぎりぎりまで建てても大丈夫。
でも、民法からいうと、周り家が50㎝以上離して建てていない場合は、50㎝は離して建ててね。ってことです。
どちらを優先されるかですが、その土地や条件によって違ってくるので、民法が優先されることもあれば建築基準法が優先されることもあります。
隣人が土地ギリギリに建物を建てるとなんらかのトラブルがあった時に、裁判で争う事になってしまうのであらかじめ50㎝以上隣との距離を取っておいた方が無難なのです。
違法建築物と認められないためにも、建築会社も建築中止や隣人トラブルで裁判で争う羽目にならないように不安材料を取り除いておきたいという業者もいるでしょう。
問題は自転車置き場
家と家との距離はこのような事から、50㎝は離した方が良いと思います。
しかし、我が家の場合、自転車も通ることができない程、玄関口が狭くなってしまいました。
自転車に限っては、家の目の前は道路で、車の出入りもあるので、車の前にも置けません。
隣の家の間の50㎝の幅に無理やり押し込んでます。
最近は、後50㎝あればこんなに苦労することなかったなの・・・っと後悔するばかりですが、空けなかったら空けなかったで不都合が出てくると思うので、これで良かったと言い聞かせてます。